引き続き、『実践 日本人の英語』を読み進めます。
本日は、P47~64を読了しました。
面白いと思ったのは次の部分。(英文の冒頭が小文字になっているのは、例として挙げられた学生の英作文の一部であるため)
it became a very precious meomory
について考えてみよう.日本語では「貴重な思い出になりました」も「貴重な思い出になっています」も意味に大きな違いはないだろうが,《時》に対して敏感な英語ではそうはいかない.私はこの文章を
it has become a very precious memory
と添削した.簡単に言えば,過去形でit becameと書くと,「前は貴重な思い出だったが,今は特にそうでもない」という印象を与えてしまうからである.貴重な思い出ができたのは確かに過去のことだが,今でも貴重なはず,と私は想像したので,過去のある時点に起きたことが今でも有意義であることを表す現在完了形に訂正した.英語のit becameとit has becomeには,こうした重要な使い分けがあるのだ.
(マーク・ピーターセン著『実践 日本人の英語』(岩波新書)P51~52より)
過去形と現在完了形の英語は、日本語にすれば多くの場合「~した」という風に同じ訳になるので、何となくの理解で済ませている人も多いと想像します。
でも、上の引用文からもわかるように、過去形と現在完了形の使い方を間違うと思わぬ誤解が生じるので、二つの使い分けについて深く理解することは重要です。
言葉で説明すれば、現在完了形は過去のある時点における出来事や動作の影響が現在にも及んでいる場合に使います。
一方、過去形は単に過去の出来事や動作を表し、現在とは断絶しており、あくまで過去は過去のことです。
これは数学の数直線のようなものでイメージをつかむと理解しやすいと思います。
現在完了形は次のようなイメージです。
数学の数直線では「含む」ことを黒丸で、「含まない」ことを白丸で表したことを思い出します。
現在完了形では、過去のある時点における出来事や行為の結果の影響が現在にも及んでいるので現在の地点は黒丸です。
引用文の例でいえば、貴重な思い出ができた過去のある時点は当然黒丸ですが、同時に現在に至っても貴重であると考えられるので「現在」も黒丸になっています。
一方、過去形は以下のようなイメージです。
過去のことはあくまで過去で完結しており、現在とは断絶しています。
このように過去形と現在完了形の違いで重要なのは、ある出来事や行為に関して、過去と現在が繋がりを持っているのか、それとも断絶しているのか、です。
過去形にするか現在完了形にするかで迷った場合は、その点を注意深く見極めてみるとよいと思います。
また、日本語で「~した」だからといって、すぐに過去形に飛びつかない慎重さも必要です。