「人によくする」を意味する英語kind,nice,good,gentleのニュアンスの違いがわかりやすく解説された『続 日本人の英語』byマーク・ピーターセン

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引き続き、『続 日本人の英語』(岩波新書)を読み進めます。

本日は、P159~168を読了しました。

川端康成の小説『山の音』には、文庫本1ページに「やさしく」という言葉が7回も登場するシーンがあります。

E.G.サイデンステッカーの英訳ではこれが4つの単語によって訳し分けられており、『続 日本人の英語』ではそのことについて書かれています。

参考になったのは次の記述。

kindnessは一般的な美徳であり,目下の人,あるいは家族にkindであるのは当然だという感覚は強い.一方,その意味でniceはkind以上のこととなる.いわば,「やや必要以上」という雰囲気があるからこそ,軽い批判になりうるのである.それに対して,父親が長男の嫁にgoodだと言ってしまったら,物質的に「気前がよく,物惜しみをしない」という意味に傾くので,ここではgoodもふさわしくない.また,gentleにしてしまうと,まるで房子が,父の菊子へのやさしさは性愛ではないかと嫌疑をかけているかのように聞こえるので,使えないのである.

(マーク・ピーターセン著『続 日本人の英語』(岩波新書)P164より)

kind, nice, good, gentleにはみな「人によくする」という意味がありますが、この部分を読んでそれぞれのニュアンスの違いが腑に落ちました。

kindは礼儀のレベルで「人によくする」、niceは「kind+アルファ」の「人によくする」、goodは物質的やり取りが伴うほど「人によくする」、gentleに至っては身体的な接触が伴いうるほどの「人によくする」。

つまり、

kind→nice→good→gentle

の順で、コミットメント(献身、関与)の度合いが大きくなるのだと理解しました。

もちろん、文脈によって意味合いが変わったり、例外もあるでしょうが、基本的にはこのイメージで問題ないと思います。

gentleは、比較的ベタベタした印象を与える表現なんですね。本書では、「ちょっぴりエロチックなニュアンスをもつgentle」(P166)とも書かれています。

Yahoo!知恵袋でも、ある質問者が次のように書かれていました。

英語のネイティブから指摘されました。

女性が男性に対して、He is kind and gentle. というと、まるで、その男性と恋人同士で「彼って、やさしい の♪」と言っているようにきこえる。

だから、gentle は使わず、He is kind and polite. のほうがいいよ!と。 でも、ネットで調べでも、そうした事について特にでてきません。

kind, nice, goodを下手に使って生じる誤解は、多くの場合、些細なものだと思われますが、gentleについては使い方に注意した方がよさそうですね。 

『続 日本人の英語』は少しずつ読み進めていますが、毎回新たな発見のある本です。興味のある方は一度読んでみてください。