『蘇軾 その詩と人生』(海江田万里著)1章を読んだ感想~自民党のあの大物政治家も蘇軾の詩を愛読していた?~

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『蘇軾 その詩と人生』という中国の北宋時代の詩人、蘇軾(そしょく)の伝記の第1章を読了しました。

蘇軾の詩が好きで、とにかく彼のことが知りたいと思い、Amazonで見つけたのが本書です。ただタイトルだけを見て購入したのですが、なんと、よく見れば著者は政治家の海江田万里氏。てっきりどこかの大学の文学研究者が書いたものだと思い込んでいました。

蘇軾は、学校の漢文の授業でも知る機会のある詩人です。が、杜甫や李白の印象が強すぎて、実際、その名を記憶に留めている日本人はそれほど多くないかもしれません。

でも、中国人ならだいたいの人は知っている詩人です。それどころか、彼の詩のいくつかを暗唱できる人も多いはずです。というのも、中国では小さい時から大学受験までに150~300首くらいの詩を学校で暗唱させられるからです。

学生時代にそれほど勉強を頑張ったわけでもない普通の中国人でも、こちらが明るい月を見て中国語で「明月几时有」(明月 幾時(いつ)より有る)とぼやけば、相手は「把酒问青天」(酒を把(と)りて 青天に問う)なんて返してくれます。これは水調歌頭(すいちょうかとう)と呼ばれる、詞(ツー)の一部です。蘇軾の作品の中でも有名なもの。

本書第1章によれば、この水調歌頭の最後の句、

但願人長久 但(ただ) 願わくは人の長久を

千里共嬋娟 千里 嬋娟(せんけん)を共にせんことを

(本書P22 フリガナは一部省略)

に関しては、自民党の二階俊博幹事長が色紙に書いたものがあるといいます。

また第1章では蘇軾の生まれや父の蘇洵(そじゅん)、弟の蘇轍(そてつ)について書かれています。蘇軾の兄は幼くして亡くなり、彼が事実上の長男として育ったとあります。弟の蘇轍とは仲が良かったみたいですね。

蘇軾が科挙に合格して初めて任地に向かうとき、弟との別れを悲しんで作った詩も掲載されています。初めて読みましたが、最後の句がいいです。

夜雨(やう) 何(なん)の時か 蕭瑟(しょうしつ)たるを聴かん

君 此(こ)の意の忘る可(べ)からざるを知らば

慎(つつし)みて 苦(はな)はだ高き官職を愛すること勿(なか)れ

 

雨の夜 二人でしめやかに 雨の音を聞こうと約束したことは何時(いつ)果たせるのか

君も この約束を忘れていないことと思うが

それならば あまり高官になろうなどと思わないでもらいたい

(本書P43~44 フリガナは一部省略) 

一緒にディズニーランドに行く約束ではなく、「雨の音を聞く」約束です。なんと詩的な約束でしょうか。 

ドリカムの『大阪LOVER』の歌詞に、

東京タワーだって あなたと見る通天閣にはかなわへんよ

とありますが、蘇軾的には「ディズニーランドだって あなたと聞く雨の音にはかなわへんよ」というところでしょうか・・・

って、北宋にディズニーランドあるか。