引き続き、『続 日本人の英語』(岩波新書)を読み進めました。
本日は、P141~150を読了。前半はhearとlisten、後半はsee, look, watchの違いが解説されています。
hearが「聞こえる」、listenは「聴く」といった違いは知っていたのでそれほど驚きはありませんでしたが、see, look, watchの違いに関する解説には新たな発見がありました。
seeとlook, watchの関係はhearとlistenのそれと同じようなもの、つまり受動的(見える)か能動的(見る)かの違いがある、という認識は持っていました。
しかし、意外だったのは、例えば昨日観た映画が面白くてその話をする場合、「I see a movie last night. It was great.」(P149)と話を始めればよいと書かれていたところです。
本書を読む前であれば、自分はこうした場合、「I watched a movie last night.」と言ったはずです。
しかし、「I watched a movie last night.」は、「ゆうべ,時間をどう過ごしたのか」という質問に答えているニュアンスがあるそうです。(同ページ)
つまり、watchには時間の経過に関する意識があります。
大まかに言えば,’’seeing''は,目という’’道具’’でもって,あるものをvisual informationとして頭脳に入れることである.’’looking’’は,一応注意してみることではあるが,時間の経過をあまり感じない表現である.’’watching’’はまさに時間の経過して行く間,ものの変化を意識する,「観察」に近いことである.
(マーク・ピーターセン著『続 日本人の英語』(岩波新書)P150より)
時間意識のことを考慮すれば、watchは「見て過ごす」、「観察して過ごす」と考えるといいですね。
自分はまた、see, look, watchについては次のように整理し、「I see a movie last night. It was great.」の解説を腑に落としました。
無意識的 seeーlookーwatch 意識的
情緒的、感覚的 seeーlookーwatch 科学的、観察的
子供的 seeーlookーwatch 大人的
「子供的」、「大人的」は少し理解しにくいかもしれません。
watchのニュアンスである「鑑賞する」、「見て過ごす」は大人的な行為(あるいは表現)ですよね。
一方、seeの「見える」、「目に入る」は受動的で、比較的子供っぽい認識の仕方です。
そこからseeは子供的、watchは大人的と考えます。
もちろんこれはイメージ、ニュアンスの話であって、子供がwatchしないというわけではありません。子供が「I watched a movie.」と言っても何ら不思議ではないです。
「I see a movie last night. It was great.」に話を戻します。
自分が昨日観た面白い映画の話題を友人に振るとき、「内容の面白さを伝えること」に重点があるのであって、「映画を観た」ことそのものはさして重要ではありません。
「観た」ことは「昨日ある映画を観たんだけどさ」の「けどさ」の軽さです。だから、意識的、科学的、観察的、大人的なニュアンスのあるwatchはちと重すぎるのです。
本書の「I see a movie last night. It was great.」は、最初はちょっと戸惑いましたが、このように考えることで自分は腑に落とすことができました。
「I see a movie last night. It was great.」については、本書にはまた違う解説も書かれています。気になる方は読んで見てください。
『続 日本人の英語』は英語の上級者が読んでも、多くの発見があることでしょう。