『源氏物語』読書マラソン5。
大塚ひかり訳『源氏物語』のP25〜26まで読み進めました。前回の続きとして紹介記事を書いていきます。
ではどうぞ。
ミカドの桐壺更衣(きりつぼこうい)に対する愛ゆえの特別扱いは、周囲の嫉妬や反感を強め、結果的に彼女を苦しめてきました。
ミカドにはそれがわからないのか、あるいはそうやってなよなよと苦しむ彼女を見るのが好きなのか、彼女の危篤に際して、最後の一撃を加えます。
輦車(てぐるま)の許可です。
★輦車の許可の負の効果・・・輦車は通常、東宮、親王、大臣などハイクラスの人間だけが乗ることのできる数人で引く車。更衣が乗ることは許されない。それに桐壺更衣が乗ることを許されるということは、ミカドによる「特別扱い」に他ならず、例によって周囲の嫉妬や反感が予想される。周囲の嫉妬や反感は彼女をなよなよにする。
ミカドは輦車の許可を出し退出させようとするものの、すぐにまた桐壺更衣の部屋に入っていって、
「やっぱ今のなし」
とは言わないですが、かわりに、
「死ぬ時も一緒にと誓ってくださったのに。いくらなんでも私を見棄てては行けないだろう」
と、危篤の彼女をなじります。
これに対し、息も絶えだえ、和歌を送る桐壺更衣。
かぎりとて別るる道の悲しきに いかまほしきは命なりけり
定めだからと別れる道を行くのが悲しい。私の行きたいのは死出の道ではなく生きる道。私は生きたかったのに
結局、桐壺更衣は、夜半を少し過ぎた頃にミカドのいない所でこの世を去ります。
彼女の死を知ったミカドは、気も狂わんばかりに嘆き悲しむのでした。
読み進めているのは、古典エッセイストの大塚ひかりさんが訳された『源氏物語』です。いくつもある源氏物語の日本語訳の中でも特に現代的な訳で、かなり読みやすいのでおすすめ。