for youは「あなたのために」ではない?総称人称としての英語のyouの使い方を簡単な例文でわかりやすく解説された『続 日本人の英語』byマーク・ピーターセン

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引き続き『続 日本人の英語』(岩波新書)を読み進めます。

今日は、P131~140まで読了し、相変わらず新たな驚きがありました。

それは、youの意味についてです。

え、youってI love youのyouでしょ?「あなた」っていう意味じゃないの?そんなの小学生でも知ってるよ、バカじゃないの?死ぬの?と思われたかもしれません。

I love youのyouはもちろん「あなた」や「君」という意味で間違いはないです。が、実はyouには他の使い方もあるのですね。

それは「総称人称」と呼ばれる用法で、I love youのyouのように「特定の人」ではなく、人間全体を一般的に指し示すものです。

例を挙げます。

You never can tell what will happen in future.

この英文は「未来に何が起こるかはわからない」という意味です。このYouは総称人称としてのyouで、「あなた」のことをいっているのではなく、人間一般を指し示しています。

この英文くらいなら、たくさん英語に触れてきた人なら経験的に何となく理解しているかもしれません。

しかし『続 日本人の英語』では、おそらく英語の上級者でも大部分の人が「あなた」と解釈してしまうのではないかと思われる英文が紹介されています。

例えば本書では、ルイス・キャロルによる『鏡の国のアリス』の、ハンプティ・ダンプティとアリスとの会話の一部が引用されています。

その中で、ハンプティがアリスに対して言った言葉に次のものがあります。

There's a glory for you!

これを『続 日本人の英語』の著者ピーターセン氏は「それは,驚嘆すべきじゃないか!」(P138)と訳しています。

実はこのyouも、アリスという「特定の人」を指し示すyouではなく、総称人称としてのyouだというのです。

『続 日本人の英語』では、『鏡の国のアリス』の日本語訳書3つのバージョンからThere's a glory for you!の部分の訳をそれぞれ紹介しています。で、なんとその内の2つはyouがアリスとして訳されているのです。プロの翻訳者でも誤って解釈してしまっているのですね。

ピーターセン氏は、youが「特定の人」を指し示すyouなのか、それとも総称人称としてのyouなのかを判断するためには「全体としての意味をよく考えなければならない」とします。

どの英文法書でも,’’you’’は,特定の人を指すだけではなく,人間を一般的に表す「総称人称」というのもあることが説明されているが,’’you’’をみて,いずれであるかを決めるためには,文全体としての意味をよく考えなければならない.

この’’for you’’は,たとえば期待の四番打者が9回裏にスタンド上段に入る特大のホームランを打ったとき,アナウンサーが

’’Now, that’s a homerun for you!’’(やりました,これぞというホームランです!)

と言うような,気持ちとしてはindeedに近い強調の気持ちがこめられている使い方なのである.こういう場合のyouには「誰が(どんなyouが)見ても文句ない」という気持ちが働いているが,これは文全体の意味から判断するよりほかない.

(マーク・ピーターセン著『続 日本人の英語』(岩波新書)P139より)

人称代名詞が漠然と「人たち」を指し示す例は他にもいくつかあります。

例えば、外国人を連れて地元を案内する場合に、「ここでは雪はほとんど降りません」と英語で言いたい場合、

We have little snow here.

と表現できます。

この英文のWeも、自分を含めたその地域の人々を漠然と指し示したものです。

 

今回読んだパートでは他に、日本語の歌を英語に翻訳する難しさなどについても書かれています。

気になる方は『続 日本人の英語』でお楽しみください。