日本の政治体制がわかりやすく解説された『日本の統治構造』(中公新書)を読んだ感想。大統領制より議院内閣制の方が権力集中的?

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『日本の統治構造 官僚内閣制から議院内閣制へ』飯尾潤著(中公新書)を読みはじめました。一度読んだことがありますが、良書なのでもう一度読み返しています。

面白い本というのは、読み手の思い込みを打ち砕いてくれるものですが、本書はまさにそんな本ですね。

まだP21までしか読んでいませんが、すでに目から鱗が落ちています(大昔に読んだので内容を忘れている)。

例えば、多くの日本人は、日本のような議院内閣制より、アメリカのような大統領制の方が権力集中的で大胆な改革をしやすいというイメージを持っているかもしれません。

ところは事実は逆で、本書は大統領制の方が権力は分散的なのだと教えてくれます。

イギリスは議会主権の国であり、権力が内閣あるいは首相に集中する議院内閣制を採っている。それゆえ権力分立は制限され、むしろ権力が集中している。それに対してアメリカでは権力分立が徹底され、政治権力は議会と大統領との間で分有されている。そこでアメリカの政治は権力抑制の側面が強い。

(『日本の統治構造』(中公新書)P5)

「政治権力は議会と大統領との間で分有」というのはどういうことかというと、大統領と議会が別々に選出されているということです。

日本では、選挙によって国会議員を選び、その国会議員が首相を選び、その首相が内閣を組織します。国民を源とする権力が内閣にまで一本の線で連なっています。

ところが、アメリカの大統領制ではそうはなっていないといいます。

先進民主制に限れば、政治体制は大統領制と議院内閣制に大きく分けられる。その際に両者を分けるもっとも重要な点は、二元代表制か一元代表制かである。つまり、民主制のもとでの大統領制は、大統領と議会とが別々に選出され、それぞれが正当性を有しているため、民意は二元的に代表される。それに対して議院内閣制は、議会のみが民主的に選出され、その議会の正当性を基盤として内閣が成立するために、民意は一元的に代表される。ここに着目すれば、議院内閣制のほうが大統領制よりも権力集中的な制度なのである。

(同書P18)

アメリカは超大国ですから、例えば外交に関して大統領が何かを決めるとその影響は甚大です。そういう意味では、アメリカの大統領は権力が強いと考えるのは、間違ってはいないと思います。

しかし、純粋に政治制度の観点から見た場合、アメリカ大統領というのは、我々日本人が思うよりも、力のない存在なのでしょう。

政治、特に日本の政治に関する教養を身につけるには、『日本の統治構造 官僚内閣制から議院内閣制へ』はとても良い本だと思います。

何よりも読んでいて面白いです。