my, his, herなどの人称代名詞の所有格に定冠詞theと同じような機能があるという日本人の盲点を気づかせる『続 日本人の英語』

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マーク・ピーターセン『続 日本人の英語』の「あの人を忘れたい―単数形と複数形」のパートを読了。

話すときや書くとき、日本語では、主語や数を明言せず、具体性を避けがちである。

一方、英語の場合は、主語はもちろん、単数か複数かもはっきりさせる傾向がある。それは日本人にはくどく思われるほどである。常に傍らに、「何名様でいらっしゃいますか?」などと、数を問うウェイターが控えているかのようだ。「見ればわかるだろ、1人だ!」はあまり通用しない。

本書でもそのことを例を挙げて示してる。

それと同様に,腕(arms)や,脚(legs)などは,まさに一本一本のものとして意識するのが当然である.だから「彼は脚が痛いと言っている」というとき,英語では,かならず

He says he has a sore leg.

か,あるいは

He says his legs are sore.

と,片脚か両脚かをはっきりと表現する.

(マーク・ピーターセン『続 日本人の英語』(岩波新書)P50)

soreは、「さわると痛い」、「炎症を起こした」、「(筋肉の疲労などで)痛む」といった意味。

数をはっきりさせないと傍らのウェイターに、「痛いのは片脚でしょうか?両脚でしょうか?」と問い詰められる。日本人としては、「片脚で......」と、緊張で身じろぎをしてしまいそうである。緊張をやわらげるために、「あ、あとでもう片脚も来ます!」などと冗談のひとつもかましたくなる。

さらに緊張するのが、片脚は片脚でも、いずれの脚かが特定されていない場合は、his legとは言えないという点だ。

また,「痛いと言っている」脚は,片脚だけだと分かった場合でも,日本人はとかく英語で次のように言いがちである.

He says his leg is sore.

しかし,”his leg”というのは,機能的には定冠詞の”the leg”と同じように,「決まった一本の脚」を示すのである.だから,二本の脚のいずれかが決まっていない場合には,

He says he has a sore leg.

と,不定冠詞で言う.

(同書P51)

この点は、英語に苦手意識があまりない日本人にも盲点である人は多いと思う。

「the+名詞」は基本的に、話し手と聞き手が具体的にどの「名詞」を示しているのかお互い了解している前提において使える。日本語でもいきなり「その男(the man)」と言われたら、「どの男?」と疑問に思うだろう。

hisに、機能として、そのtheのような特定性があるというのだから、どっちの脚か話し手にも聞き手にも了解されていない状況で、his legとは言えない。

my, his, herなど、英語の人称代名詞の所有格は、theと同じように使い方によく注意した方がよい。my, his, herの背後にtheが透けて見えるくらいの意識がいいかもしれない。

というのも、英語で、誰と映画を見に行きましたか、と尋ねられたら、多くの日本人はI went with my friendなどと答えるだろうと思うからだ。この返答は、英会話としては、状況にもよるだろうが、アウトであるようなのである。この例についても詳しく解説されているので、興味のある方は『続 日本人の英語』でどうぞ。