マーク・ピーターセン『日本人の英語』、パート10のうちの11を読了しました。
パート11の内容は、「動詞+副詞」のイディオムについてです。
辞書でgetやputを調べるとわかりますが、英語の「動詞+副詞」のイディオムは非常に多いです。get by, get off, get through, put away, put forth, put on...と挙げていけばきりがありません。
しかし、ピーターセン氏は、こうしたイディオムの重要性を強調します。
なんといっても, この類の表現はイディオムであるから, とかく不自然な英文を書きがちな日本人にとって, 大切なものに思われる. 自分の文章に少しでも英語らしさを与えてくれる表現はとても貴重なのである.
(マーク・ピーターセン『日本人の英語』(岩波新書)P90)
ピーターセン氏は続けて、「動詞+副詞」のイディオムの使い方を理解するには、「副詞」の部分が大事であるといいます。
ところで, このイディオムの使い方を理解する鍵は, その「どんな意味にでもなりうる」曖昧な動詞ではなく, もっと限られた意味をもつ「副詞」の方である. 「慣用表現のほとんどの場合は論理的根拠も明確にできている」とすでに述べたが, この副詞についても, 私は同じ点を強調したいと思う.
例えば、acrossという副詞には、「~を横切って、~の向こう側に、~と交差して」という意味があります。そして、そのacrossとセットになったイディオムはどれも、これらの意味合いを含むものになっているのです。
本書では、いくつかの例文が挙げられていますが、ここではイディオムの紹介をします。
例えば、put A acrossとget A acrossはいずれも、「Aをうまく説明する、理解させる」という意味です。
put A across / get A across Aをうまく説明する、理解させる
これは言いたいことなどが、こちら側から向こう側に(相手に)伝わるということで、acrossの基本の意味合いが感じられます。
本書では、この2つのイディオムにはいくらか「成功した」ニュアンスが含まれているといいます。
get acrossとput acrossの場合, それは使役動詞のようなものになるので, 「渡る」というより「渡す」という意味に近く, ものを「運ぶ」あるいは「伝える」フィーリングが強い. そして日本語の「乗り越えた」という表現と同じような現象で, get acrossとput acrossには, いくら「成功した」という感じも入っている.
(同書P94)
上記にもあるように、get acrossには「(人や物)を向こう側へ渡す」という意味もありますが、そうした意味での例文も続けて挙げられています。
The boat got us safely across the lake.(その船は僕たちを湖の向こう側まで無事に渡してくれた.)
以上のように、パート11では「動詞+副詞」のイディオムを理解するコツが説明されています。
ただ、個人的に最も印象に残った部分は、パート11の冒頭でピーターセン氏が、runとgetとputくらいあれば他の動詞をほとんど使わずに聖書の現代語訳ができるような気がする、と述べているところです。実際に可能かどうかはともかく、それくらいこれらの動詞が、副詞などと合わさって多くの意味を表せるということなのだと思います。
実際、冒頭で、
彼女は夫とうまくいかなくて別れたいと思っていたが, 実際離婚してみると, 孤独感も克服できず, 経済的難局も切り抜けられない.
(同書P89)
という日本語の文章を、動詞についてはwantとgetだけを使って英文に訳されたものを紹介しています。
英語の得意な高校生ならできないこともないので、一度英訳に挑戦してみてはどうでしょうか。なお、答え合わせは『日本人の英語』でどうぞ。