マーク・ピーターセンの『日本人の英語』、パート20のうちの8を読了しました。
8は、前置詞のinとonについてです。
前置詞は、本来の感覚やイメージ(著者は「論理」と表現されますが)を知っておくとよいです。そうすれば、例えば、「あわてて、急いで」という意味のin a hurryなど、応用的に使われた際に、理解するコツが得られます。
inの基本の意味とイメージ
There is a cat in the room.
部屋に猫がいる。
inの基本の意味は、「~の中に」です。この例文からわかるように、何かがある空間の中にいる(ある)イメージです。何かに包まれています。
onの基本の意味とイメージ
There is a book on the desk.
机の上に本がある。
onの基本の意味は、「~の上に」です。この例文からわかるように、何かがある平面の上にある(いる)イメージです。何かに接しています。
各前置詞のこうした根本にあるイメージを知っておくと、一見、不可解に思われる応用的な使い方に出くわしても、きちんとすじが通っていることが理解できます。
本書では以下のように述べています。
簡単にいえば(inとonの使い分けに限らず, 前置詞一般に関しても), どんなに抽象的な使い方になっても, もともとの論理がちゃんと守られ, そして, その論理を覚えておけば, 洗練された英文の読み書きでも楽になるのである.
(マーク・ピーターセン『日本人の英語』(岩波新書)P66)
inとonの基本イメージを広げる
日本語の「そんな気分じゃない」は、英語でI'm not in the moodと言います。
I'm not in the mood.
そんな気分じゃない。
この例文から考えると、inは、「あるムードの中にいる」、つまり、ある気分的な空間の中にいるイメージであると、応用的に捉えることも可能です。
一方、日本語には、「彼は難しい立場にいる」という言い方があります。「立場」は「場に立つ」と読めますが、この文は、抽象的に、困難な状況に彼が置かれていることを言っています。onについても、ある場所の上に立つ(ある)という物理的なイメージとともに、それを応用的に捉え、抽象的に、ある立場にいるイメージを持つとよいです。
このinとonのそれぞれの、基本を押し広げたイメージをつかめば、本書に載せられた以下の例文の理解も難しくないと思います。
She left in a hurry on an errand.
彼女はあわててお使いに出た.
in a hurryは「急いで、あわてて」、on an errandは「使いで、用事で」の意味です。
「あわてている」というのは、一種の心的な状態、もしくは気分です。それがムードとして外にあらわれ、「彼女」を包み込んでいます。あるいは「彼女」がそのあわてたムードの中にいます。だから、inです。
一方、「お使い」というのは、一種の立場です。「立場に立っている」のイメージから、「彼女」は「お使いの立場に立っている」と見ることができます。だから、onです。
このように考えれば、本書の以下の説明もよく理解できるのではないでしょうか。
彼女は, あわてている状態(の中)にいる. つまり, あわてているのは彼女自身である.そういう意味で”in a hurry”の”in”がちょうどよい. 一方, 彼女自体とその”errand”の仕事自体との接触を考えてみれば, そこには平面性も過分性も感じられ, "errand"には"on"しか前置詞として連想されない.
(同書P67)
本書ではさらに話が進められて、ではget in the carとget on the trainの2つの前置詞はどういう論理で使い分けされているのか、という問題に入ります。
答えは、目からうろこですが、続きは『日本人の英語』でお楽しみください。