前置詞のbyとwithの使い分けが超わかりやすく簡単に解説された『日本人の英語』byマーク・ピーターセン

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マーク・ピーターセンの『日本人の英語』(岩波新書)、パート20のうちの7を読了しました。

7の主な内容は、手段などを表す前置詞の使い分けです。

語学の勉強において丸暗記は有効な手段の1つですが、このパートでは文法の爪の甘い丸暗記による弊害を見た気がしました。

学校や塾の授業では、「~によって、―される」を意味する英語の受身表現は、「be動詞+過去分詞」で表し、「~によって」の部分はbyを使う、と習います。

しかし、この知識に基づいて機械的に受身の英語を組み立てていると、思わぬ間違いをおかしてしまいます。

パート7の冒頭では、次のような間違いの例が挙げられています。

The cranes were observed by binoculars.

(マーク・ピーターセン『日本人の英語』(岩波新書)P57)

この文は一見「鶴は双眼鏡によって観察された」と読めそうですが、実際は、「鶴は双眼鏡観察された」という意味になります。

あたかも自らの意識を持った双眼鏡が、「お、鶴や鶴や」といった感じで鶴を観察したSFチックな状況です。

間違いを正すと、以下のようになるといいます。

The cranes were observed with binoculars.

(同書同ページ)

このwithは、「(道具・手段)~で、~を使って」の意味で、動作主が意識的に使う道具などを導きます。

つまり、withの後ろには、動作主に使われる道具や手段がきます。

この記事の冒頭で、「文法の爪の甘い丸暗記による弊害」と書きました。

実はこれは、暗記の際に、「(道具・手段)~で、~を使って」に見られる(道具・手段)のような情報を見逃しがちという意味を込めたかったからでした。

その意味でbyについて言えば、byの「~によって」は、運輸や伝達などの「~によって」(例:travel by train)であったり、製造、発明、創作などの行為主の「~によって」(例:written by him)を意味します。

上記の鶴の例文の「双眼鏡によって」は、道具や手段の意味なので、創作や運輸のbyではなく、withを使うのが適切となります。

そうか、ではこれからは「(道具・手段)~で、~を使って」のカッコ書きの部分に注意して勉強していけば問題なし、とそう簡単にいかないのが、語学の難しいところで、また面白いところです。

例えば本書では、

The performance was shown on Televison.(その上演はテレビで放映された.)

(同書P62)

という例文が紹介されています。

「テレビで」の部分は、伝達の手段と考えて、byでいいのではないか、と思われるかもしれませんが、この例文ではonになっています。

byという1つの前置詞にも、運輸、伝達、など色々な顔がありますが、このonは果たしてどんな顔をした前置詞なのでしょうか?

続きは、『日本人の英語』でお楽しみください。