定冠詞のtheがつくときとつかないときの違いは名詞にはない理由を超わかりやすく解説

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マーク・ピーターセンの『日本人の英語』、パート20のうちの6を読了しました。

6は、定冠詞のtheの使用についてです。

どんな名詞もtheがつき得る

名詞だけをみて、それにtheがつくかどうかを考えるのはあまり意味がありません。というのも、条件が整っていれば、どの名詞にもtheがつくからです。

もう一つ強調したい点は, 文脈によるが, theの意味的カテゴリーに入らない(つまり, 上述の望ましくない考え方でいえば, 「theがつかない」)名詞はまったくないという点である.

(マーク・ピーターセン『日本人の英語』(岩波新書)P50)

その条件というのは、文脈によって、その名詞の輪郭が、具体的な存在として、明確になっていることです。

「名詞の輪郭が明確」とはどういうことか?

例えば、カフェで、かおりとみきという子がおしゃべりをしているとします。

そこでかおりが、みきに対して、「昨日、変なおじいさんに出会ったんだけどさ、道を歩いてたらいきなり話しかけてきて、竹をよこせって言うの」と語り始めたとします。

この語りの冒頭における「変なおじいさん」は、英語にするとa strange old manになります。

聞き手のみきにとっては、「変なおじいさん」というのは世の中に少なからずいる「変なおじいさん」のうちのひとりに過ぎず、輪郭の不明確な存在です。

だから、話し手のかおりはまずaを使った、a strange old man(ある変なおじいさん)で話題にあげる必要があります。

ところがその瞬間から、その「変なおじいさん」は聞き手のみきの頭の中で、輪郭の明確な存在に変わります。

つまり、「昨日、友達のかおりが、道を歩いているときに出会った、竹を要求する変なおじいさん」という非常に具体的な存在になります。

そうなってはじめて、話し手のかおりは、the strange old man(その変なおじいさん)という言い方で話を続けることができるようになります。

このように、ある名詞の輪郭が明確になっているか、あるいはその名詞が十分に具体的になっているかを、本書では「文脈がtheが使えるほど十分に限定しているかどうか」(P53)と表現しています。

常識という文脈によって最初から輪郭の明確な名詞

この条件を満たしてさえいれば、まずa(もしくはan)で話題にあげ、それからtheに移る、という流れにこだわる必要はありません。

例えば、「月」を意味する英語のmoonは、基本的には、いきなりthe moonのかたちで話題に出すことが可能です。

なぜなら、月といえばあの「月」のことしかありません。

月は、この世にただ1つしかなく、常識という文脈によって、すでに十分に輪郭の明確な存在として、人々の頭の中で共有されているからです。

そういう類の名詞(moonの他にearth、sunなど)は、はじめからtheとセットで話題に出すことができます。

一文の中で名詞の輪郭が明確になるパターン

語りや常識といった比較的広い文脈の中で名詞が限定されることもあれば、一文の中で名詞が限定されることもあります。

本書では、以下の例文が挙げられています。

He is interested in the painting of pictures.

(同書P54)

「彼は絵を描くことに興味がある」という意味ですが、この文ではof picturesによってpaintingが限定されているので、the paintingとすることができます。

「描く」は「描く」でも「絵」を描くことに限定されているため、the paintingとなるのです。

『日本人の英語』、英語の本質的なところが解説されており、目からうろこの一冊です。興味があればご一読ください。

つまみ読みの面白い文法書

著者のマーク・ピーターセン氏は、『表現のための実践ロイヤル英文法』という文法書にも共著者の一人として参加しています。

つまみ読みの面白い文法書です。

近年ノーベル賞候補としてメディアでたびたび名の挙がる小説家の村上春樹さんが、一時期設置された「村上さんのところ」という特設サイトで、推薦された過去もあります。

孫引きになりますが、こちらのサイトから引用します。「村上さんのところ」は読者の質問に村上春樹さんが回答するというもの。

★質問 仮定法現在と仮定法過去の使い分けができません。英語話者の人たちはどうやって区別しているのでしょうか? (コマさん、男性、16歳、学生)

 

★回答 仮定法の原理についてここで説明するわけにはいきません。申し訳ありませんが、ちょっと暇がないんです。『表現のための実践ロイヤル英文法』(綿貫陽、マーク・ピーターセン著・旺文社)は優れた本です(無人島に持っていってもいいくらいです)。これを読むと仮定法の細かいニュアンスが理解できると思いますよ。読んで理解してください。仮定法はとても大事です。しっかりマスターしてくださいね。村上春樹拝