中国の皇帝の歯磨き時間は女官の稼ぎ時

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今日头条(中国)というアプリの史小纪というチャンネルで、皇帝の歯磨きのお世話をする宮女(女官)について解説した動画を見ました。

 

動画は、中国語の「冲龙沟(衝龍溝)」という言葉は何を意味するか、という問いかけからはじまります。

衝、龍、溝だから、龍が溝に突っ込み、はまってしまって抜けられなくなること・・・という意味ではありません。

実は、中国の皇帝が「うがい」をすることを冲龙沟(衝龍溝)といいます。

神聖な皇帝の口を「皇帝の口」と軽々しく呼び、「今朝の皇帝の口めっちゃ臭くてさ」などとは言えませんから、「皇帝の口」を「龍溝」と呼びました。

衝龍溝は実質、現在でいう「歯磨き」と考えてよいかと思います。

皇帝は朝起きるとまず、うがいをします。

その時、茶葉を浸したもの、すなわち「お茶」でうがいをしたといいます。

この皇帝の「うがい」のお手伝いするために、宮女たちが先を争いました。

なぜかというと、皇帝がうがいを終えた後の「茶殻(ちゃがら)」がお金になったからです。

宮女の中には、その茶殻を一部、失敬して、朝廷の外で高値で売り、それで得たお金を家計の足しにする者がいたといいます。

といってももちろん、宮女が皇帝のうがい係を務めることを欲したのは、茶殻が第一の理由というわけではありません。

やはり、皇帝の寵愛を我が物にし、栄華を得たかったからです。

身分のさえない女性が身分の高い人などの妻となることを日本語で、「玉(たま)の輿(こし)に乗る」といいます。

中国語では似た意味で「飞上枝头变凤凰(枝の先にとまって鳳凰に変身する)」と表現します。

宮女たちはまさに鳳凰にならんとして、皇帝のうがい係の先を争ったのです。

動画では最後に、「伴君如伴虎」という言葉も紹介します。

意味は、君主に仕えるのは虎に仕えるようなもので、いつ身に危険が及ぶかわからない、というもの。

中国の歴史ドラマの「あるある」ですが、中国の朝廷では臣下のちょっとした言葉が皇帝の気に障り、その臣下が処刑されることがよく起こります。

だから、例えば皇帝の口が臭くて、宮女が思わず「くさっ」と言おうものなら、どのような禍(わざわい)がその宮女の身にふりかかるかわかったものではありません。

皇帝に仕えるということは、その寵愛を受けて栄華を誇るチャンスがある一方、命を落とす危険と隣り合わせなのです。

宮女にとって、皇帝のうがいのお世話したり、その寝所にお供をするというのは、今でいう、ハイリスクハイリターンの金融取引、FXのようなものだったのでしょうか。

中国文化に関するおすすめの本

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参考:今日头条「史小纪 【古代皇帝每天冲龙沟,宫女为啥毫不避嫌还要枪着伺候?】」