未婚問題は豊かな社会の裏返し?中国の農村と都市の結婚できない男女にみる少子化の複雑さ。

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中国の葉檀という方が、中国の農村で暮らす青年の結婚の難しさについて解説した動画を見ました。葉檀は、複旦大学を卒業し、歴史学博士で、経済評論家として活躍されている方です。

 

葉氏によると、問題の本質は、なぜ農村で男が多く女が少ない状況が生まれたか、という点にあるといいます。

それは、生まれたのが男の子であれば家業を任せられるという、中国の伝統的価値観のためとします。

しかも、一般的な結婚適齢期は20歳から30歳ですが、特にこの年齢層で男女比率が男の方に偏っています。

一方で、中国の女性の生きる道は多様になりました。

葉氏は、『山海情』という中国のドラマを例に挙げます。

そのドラマでは、寧夏(ねいか)の農村に住む女工が、福建(ふっけん)に移り、そこで成長する様が描かれています。

彼女は、必ずしも寧夏の農村に帰って結婚するとは限らないでしょう。彼女が生活している地で、あるいはさらに広い範囲から、自らの配偶者を選ぶのです。

現在の中国の婚姻状況は、ある両端を形成しており、そこに属する人々が特に結婚が難しいとします。

一つは、農村に住む比較的貧しい男性であり、もう一方は、都市に住む比較的裕福な女性です。

数年前のデータによれば、ヨーロッパでは、すでに40%以上が結婚をせずに子供を産むようになっています。

葉氏はこの状況を、経済的に豊かで福利厚生が充実しているので、家庭というものにこだわる必要がないためとします。

そして、中国はまだこの段階には達していないと考えます。

しかし、もし今後、中国経済がこの段階にまで発展すれば、徐々にそうした状況が見られるようになるでしょう、と葉氏は言います。

私たちは社会に多くの選択肢が存在することを受け入れなければならないのです。経済力が強くなるほど、そして文化が多元化するほど、選択性もより強くなるからです。

こういう状況を知ると、未婚問題や少子化というのが、一体問題なのか、そうでないのか、わからなくなります。

女性の社会進出が容易になったからこそ、結婚の難しい都市部の裕福な女性というものが出現したともいえます。

そうすると、問題の裏に良いこと(女性の社会進出の向上)が背景としてあると見ることも可能です。

一方で、高齢者と若者のバランスが大きく崩れると、社会不安を増大させる原因になることも確かです。

今後の中国では少子高齢化が急速に進んでいくと見られています。

中国について確実にわかっていることが一つあります。それは人口動態です。これは客観的なデータが出ている。中国は2020年に総人口が14億人を突破しましたが、2027年には人口増がピークアウトして、それから急激な少子高齢化に突入します。2040年までには生産年齢人口が1億人減少します。特に30歳以下では30%減少する。一方、65歳以上の高齢者は2040年には3億2500万人を超えます。中国の中央年齢は今はアメリカと同じ37.4歳ですが、2040年には48歳にまで上昇します。これは現在世界最高の日本の中央年齢(45.9歳)を上回る数字です。

中国はこれからどうなるのか? - 内田樹の研究室より)

こうした懸案を抱えているとはいえ、中国の小説家、余華による作品 『活きる』で描かれた時代に比べたら、今の中国は比較的まともな社会になったと思います。

 

参考:今日头条「叶檀财经【农村青年结婚有多难?背后的原因很现实!】」