『源氏物語』読書マラソン17〜光源氏はプレイボーイではないという前置き〜

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『源氏物語』読書マラソン17。

大塚ひかり訳『源氏物語』のP63〜64まで読み進めました。前回の続きとして紹介記事を書いていきます(斜体のところは引用です)。

ではどうぞ。

 

光源氏に関しては、一般に、数々の恋愛沙汰でプレイボーイというイメージがあります。

しかし、彼の物語が本格的に始まるに先立ち、「プレイボーイじゃないよ」的な前置きが、実はなされています。これはすごく注目すべきポイントだと思うのですが、ただ、彼の後の行動を見ると、「ほんまかいな」という感はぬぐえません。

「怪しい者じゃございません」と道端で見知らぬおじさん突然声をかけられた時のような説得力のなさが感じられます。

けれども、あくまで、ここでは源氏がプレイボーイではないことが強調されます。

源氏がまだ近衛府の中将だった時、妻の実家に帰ることが少なかったため、彼の舅(しゅうと)の左大臣は、「他に女でもできたか?」と疑うのですが、

(・・・、)そんな浮ついてありふれた、その場限りの色恋などはお好みでないご性格で、けれどたまに、それとはうって変わって、心がすり減るような恋にのめりこむ癖が自分でも止められなくて、不適切な行動もあるのでした。

と源氏の誠実性が強調されます。引用文の後半も、プレイボーイ性を一部認めたような認めないような、「心がすり減るような恋」と、ちょっと言い訳的ですね。「真剣なんだぜ」、と。

面白いのが、「誠実っぽいもの言いをしながら、多数の女性と枕を共にする」というパターンは、あの村上春樹の小説でもよく見られるところ。

光源氏のことを「キモい」と言う読者は少なからず見かけますが、村上春樹の小説の主人公を「キモい」と言う読者も少なくないです。

キモい主人公は、文学必勝法の一つなのかもしれません。

 

読み進めているのは、古典エッセイストの大塚ひかりさんが訳された『源氏物語』です。いくつもある源氏物語の日本語訳の中でも特に現代的な訳で、かなり読みやすいのでおすすめ。