- 『学習漫画 中国の歴史』by川勝守、春日井明
- 『中国の歴史』by陳舜臣
- 『三国志』by・・・?
- 『中国史』by宮崎市定
- 『そうだったのか!中国』by池上彰
- 『現代中国の父 鄧小平』byエズラ・F・ヴォーゲル
- 『中国嫁日記』by井上純一
今日は中国本の紹介です。
『学習漫画 中国の歴史』by川勝守、春日井明
中国史の全体像を手っ取り早く把握することができます。
漫画をバカにする人も多いですが、歴史は漫画やドラマなどから入ると、ものすごく学習効率が良いです。
そこに感情を揺さぶる物語があるので、あたかもその歴史を自分が生きてきたかのように知ることができるのです。
歴史上の登場人物に顔がつき、人物関係を絵として頭に残せて便利。
『中国の歴史』by陳舜臣
小説家でもある陳舜臣(ちんしゅんしん)さんの書いた中国の通史。
口語的なやさしい語りで、中国史をあたかも物語のようにたどってゆくことができます。
歴史から何かを学び取ろうという姿勢、事実かそうでないかを慎重に見極めようとする姿勢、そういう著者の誠実さ、知性がひしひしと感じられます。
それでいて文体はシンプルで美しく、歴史的情緒が匂う名著。
『三国志』by・・・?
王道中の王道。三国志を知らずして、中国史を語るなかれ、です。
ただその三国志って何、となるとちょっと複雑。
中国大陸には昔、後漢(ごかん)という国がありました。
これが黄巾の乱(こうきんのらん)と呼ばれる農民反乱に始まる動揺ののち滅びます。
そして、魏(ぎ)、呉(ご)、蜀(しょく)の三つの国が誕生しました。その後、この三国が晋(しん)という国に統一されます。
こうした時代を、三国時代と呼びます。
んで、その三国時代に関する歴史書を陳寿(ちんじゅ)という人が書きました。それが『三国志』。 これですね↓
でもおそらく多くの日本人が言う、三国志はこの本のことではないと思います。
どの三国志のことでしょう?
話をすすめると、この歴史書に基づいて一つの物語が誕生しました。羅貫中(らかんちゅう)による『三国志演義』(さんごくしえんぎ)です。それがこれ↓
これは先に挙げた歴史書の『正史 三国志』と違い、エンターテイメント性の高い物語の色合いが強いです。一般に70%が史実で、30%がフィクションと言われます。
そして、話はこれで終わりません。
この三国志演義に基づいて、『三国志』という小説が日本人作家、吉川英治氏により書かれました。これですね↓
ストーリーラインはおおむね三国志演義に則(そく)しています。
でもでもでも、まだあって(笑)、
この吉川英治氏の三国志に基づいて誕生したのが、上で紹介した横山光輝氏の漫画『三国志』です。
多くの日本人が言う三国志は、これら日本人の手によって作り出された三国志作品のことなのです。これら、というのはここで紹介したもの以外にゲームやらなんやら色々あるからですね。
三国志を読むならまず、横山氏による漫画の三国志か、吉川氏による小説の三国志から入るとよいです。平凡な毎日で、激動、冒険、感動に飢えている人におすすめ。
べらぼうに面白いですから。
以下は吉川英治『三国志』の「孔明の巻」より。
澄み暮れてゆく夕空の無辺は、天地の大と悠久を思わせる。白い星、淡い夕月――玄徳は黙々と広い野をひとりさまよってゆく。
「ああ、自分も早、四十七歳となるのに、この孤影、いつまで無為飄々むいひょうひょうたるのか」
ふと、駒を止めた。
茫乎ぼうとして、野末の夕霧を見まわした。そして過去と未来をつなぐ一すじの道に、果てなき迷いと嘆息を抱いた。
すると、彼方から笛の音が聞えた。
やがて夕霧の裡うちから近づいてきたのは、牛の背にまたがった一童子である。玄徳はすれちがいながら童子の境遇をうらやましく思った。
――と、童子はふり返って、
「将軍将軍。もしやあなたは、そのむかし黄巾こうきんの賊を平げ、近頃は荊州にいるという噂の劉予州りゅうよしゅう様とちがいますか」と、いきなり訊ねた。
『中国史』by宮崎市定
戦後の東洋史学の重鎮、宮崎市定氏による中国通史。
上・下の2冊で中国の歴史を概観できます。
中国の波乱万丈な長い歴史を2冊で語ろうとするものですから、無駄は削ぎ落とされ、中身が非常に濃いです。
以下は、上巻P276より。
さるにても曹操の政治方針は甚だきわどいものであるには相違ない。異民族の多い軍隊の力を利用して異民族を圧え、軍隊に提出させた穀物を配給することによって軍隊を服従させるのである。少しでもこの運用に狂いが生ずれば、たちまち危険な破綻が生じそうである。だからこの体制を維持するには、極度に厳重な法令の実施が不可欠となる。それは常時社会全体を戒厳令下に置くことを意味する。
三国志を読んだ方なら「あ、曹操だ!」となりますね(笑)
『そうだったのか!中国』by池上彰
池上彰さんによる中国現代史の解説。
中国と台湾はなぜ微妙な関係にあるのか、いかにして鄧小平は中国を経済成長の軌道に乗せたか、中国の反日教育の起源・・・等々、現代中国を語る上で欠かせないトピックが盛りだくさん。
かなり突っ込んだところまで解説しているのに、池上さんのわかりやすい解説により、難しさを感じさせません。
入門書のようにすらすら読める中国現代史詳説。
以下は、文庫版『そうだったのか!中国』のP172より。
台湾が日本を離れて中華民国の一部になることに、台湾の人々は喜びました。植民地支配から脱することができると考えたからです。国民党軍が台湾に進駐する際には、大勢の住民が歓迎に集まりました。
しかし、そこで見たものは、敗残兵さながらの兵士の群れでした。ボロボロの服を着て、鍋や釡をかつぎ、やつれた兵士たちが行進したのです。歓迎に集まった人々はあっけにとられるだけでした。
『現代中国の父 鄧小平』byエズラ・F・ヴォーゲル
現代中国史上のキーパーソン、鄧小平の伝記になります。
今の世界秩序が、欧米中心によって作られてきたこともあり、国際政治学はとかく欧米中心思考になりがちです。
しかし、今やアジアの視点抜きには、世界秩序は語れなくなってきました。
特に、中国。
本書は、かつて日本でベストセラーとなった『ジャパンアズナンバーワン―アメリカへの教訓』の著者で知られるエズラ・ヴォーゲル氏の大作。
鄧小平は、貧乏だった中国を改革開放政策によって経済成長の軌道に乗せた、タイトルにもあるように、まさに「現代中国の父」です。
鄧小平の人生を、その出生から、膨大な記録をもとに、追っていくことで、どのようにして今の中国が出来上がっていったのか、ということが浮かび上がってきます。
大部で、上下2巻あり、値が張りますが、そのへんの中国に関する新書を何冊も読むより、この2冊を熟読した方がはるかに得るものが多いと思います。
大作、労作、名著で、すぐに赤線だらけに。
「鄧の考えでは、中国社会はあまりに大きく、人々はあまりに多様で貧しく、相互の敵意も大きく、そして誰もが受け入れる共通の行動規範がほとんどなかった。そうである以上、上から課す一定の権威が必要だった。中国社会は一九四九年以前や文化大革命期のような大混乱に陥ることなしに、どこまで自由の境界を拡大していくことができるのだろうか。この問題は鄧小平時代を通して一貫して、最も中核的で、最も意見対立の激しい問題であった。」
(本書(上巻)のP378より)
ただし、お硬い政治系の本に読み慣れていない人が読み通すのは大変かと思われます。
『中国嫁日記』by井上純一
おまけ。
歴史本とは言えないですが、ある意味で歴史本以上に今の中国、あるいは中国人のことを教えてくれるような気がする作品。
中国出身の嫁と日本人夫の日常のやりとりが面白おかしく、コミカルに描かれています。
歴史をたどるのも意味あることですが、一人のリアルな個人を通じて中国を理解するという手もあり。
中国人の嫁がほしい・・・なんて思いはじめるかも?