村上春樹の短編小説集『カンガルー日和』の感想

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本の紹介です。

村上春樹の『カンガルー日和』

普通の短編より、さらに短い長短編が18編収録されています。

本当に短くて、たしか村上春樹さんはどこかで、スパゲティーを茹でている間に読むのに適した本のことを「スパゲティー小説」と呼んでいましたが、そういうタイプの本です。どん兵衛待ちの間でも1、2編は読めるんじゃないだろうか。

最近はスパゲティーも早茹でタイプのものが登場し出してきていて、スパゲティーとどん兵衛の調理時間の差は狭まりつつあります。でもカップヌードルだと、読むスピードや読む作品によっては麺が柔らかくなり過ぎる可能性があります。あれはほんと、実際3分も待つ必要がなくて、1分くらいでもう食えそうな感じですからね。1分だと、4コマ漫画くらいしか読めないですよ。

『カンガルー日和』に話を戻すと、この本はまさにスパゲティー小説です。ただ別の言い方をすると、腰を据えてじっくり読むタイプのものではないですね。それぞれの作品のボリュームが少なめなので、読んでいると、品の良いフレンチレストラン(なんとハルキ的ワードなことか)で出てくるような小さなオードブルを延々と食い続けているかのような気分になっていきます。途中でカツ丼食いてぇ、と思う方も中にはいるかもしれません。でもそう思わせることがオードブルの目的なんですよね?よく知りませんがWikipediaに書いてありました。

そして、このミニオードブル的なところがこの本の良さでもあります。それぞれ個性の際立ったカラフルなオードブルたちです。

4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会う話・・・、よく知らない人の結婚式に参加させられて眠気と戦う話・・・、訳ありのタクシー運転手と雑談する話・・・、欠点のなかった立派なかつての友人が落ちぶれていく様を語り手の「僕」がサングラス越しに観察する話・・・なかなか面白いです。

よく知らない人の結婚式に参加させられて眠気と戦う話なんて、ほんとどうでもいい話なんですが、 でも意外にこういうものほど何回も読んでしまうんですよね。実はどうでもよくないからでしょうか。よくわからないです。

オードブル好きな人はどうぞ。

カンガルー日和 (講談社文庫)

カンガルー日和 (講談社文庫)

 

 

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