村上春樹のエッセイ『村上朝日堂の逆襲』の感想

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小説家、村上春樹さんの『村上朝日堂の逆襲』を読みました。

著者が30代の頃に書いたもの。平凡な日常が綴られており、適度に力が抜けていて、読んでいてほくほくします。日常体験をこれだけ面白く読める文章に仕立て上げる技術はさすが。変顔とおなじで、見てる側(読んでる側)には簡単そうに思えるのですが、実際同じことをやろうとするとかなり難しいですね。普通の人が日常を綴ったってここまで面白い読み物にはできません。

ところどころイラストレーターの安西水丸さんの挿絵が入っていますが、基本的には文章がざーっと続きます。にもかかわらず、漫画を読んでいるかのようにさらさらとページが進み、イメージが頭に浮かびます。漫画を読んでいるかのように錯覚をさせるエッセイ集。実際、『よつばと!』のように日常系の漫画にしちゃうと、さらに面白いのではないでしょうか。

個人的なお気に入りは、『グッド・ハウスキーピング』の編。著者の主夫体験を綴ったもので、具体的な1日の流れを知ることができます。最後の方にちょこっとオピニオン的なことが添えられていますが、基本、主夫の1日の描写です。女性の活躍の場が広がっていくこれからの時代、主夫になる男性はおそらく増えていくと思われますが、主夫生活の匂いをほんのちょこっと嗅ぐのによい一編ですね。

でもこういうのずっと読んでると、人間的に締まりがなくなっていきそう。いや、人間的に締まり過ぎて、ちょっと力を抜いて変顔でもしたいわあ、と感じている人のための作品です。

村上朝日堂の逆襲 (新潮文庫)

村上朝日堂の逆襲 (新潮文庫)

 

 

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