横山光輝の漫画『史記』第二話の感想〜管仲に学ぶ徳目の活用法〜

スポンサーリンク

横山光輝の漫画『史記』の第二話を読了。

今回の中心人物は、斉(せい)の桓公と名宰相として有名な管仲(かんちゅう)。このタッグで、斉は繁栄し大陸の覇者として他の国々を従わせます。

覇者といっても、形の上ではその上に周王室というものがあって、その王室に対してはあくまでも臣下ということになります。斉が東大なら、周王室は文部科学省ですね。

この漫画を読む限りでは、桓公は部下である管仲の優れたアドバイスをよく取り入れてパフォーマンスを発揮している感じです。三国志で言えば、劉備玄徳と軍師の諸葛亮孔明のタッグに近いです。どうすればよいのじゃ、とすぐに管仲に頼ります。

有能な管仲はググれと言って突き放すことはせず、的確なアドバイスをすぐに提示します。

例えば、管仲のいた斉(せい)は隣の魯(ろ)という国と戦をして勝利し、魯の荘公(しょうこう)に遂邑(すいゆう)の地を割譲させようとします。

が、そこに魯の将軍であった曹沫(そうばつ)が乗り込んできて斉の桓公を武器で脅し、それまで斉が奪ってきた魯の領土を返還し和議を結ぶよう迫りました。

結局、武器による脅しによって勝者だった斉が、屈辱的な和議を飲まされることになります。その時、管仲は、復讐に燃える桓公を、いくら脅されて和議を結んだとしても、約束は守らないと信義に反します、と諌(いさ)めます。

この時、しぶしぶ桓公はその言葉を聞き入れました。

その後、時を経るにつれ桓公は覇者として傲慢になり、周王室から下賜された品々を臣下の礼をとらずに受け取ろうとします。

が、その時も管仲が桓公を諌めます。

諸侯たちはあなたが周王室に敬意を表しているからこそ従っているのです、と。それがなくなれば、彼らはあなたから離れていくでしょう、と。

こういう管仲のアドバイスを見ると、彼は道徳的、倫理的なことを重視する人徳の人なんだな、と一瞬思うわけですが、よく考えるとそうでもないです。

「信義に反する」とか「周王室に敬意を」とか、一見、徳を重んじるオバマっぽい人に見えるのですが、理由の部分を見るとかなり現実主義者です。

約束を守るように勧めたのも、桓公が平気で約束を破る男というふうに見られないようにするためでした。周王室を尊重するように勧めたのも、諸侯が離れるのを防ぐためでした。

主張を美しいですが、理由の部分は現金です。

人をどついてはいけません。

どつき返されたら痛いからです。

みたいな。

そうか、信とか礼といった徳目はあくまで手段として使うものなのか・・・とちょっと管仲に学んでしまいそうになる漫画『史記』の第二話でした。