横山光輝『史記』の第一話の感想〜司馬遷の恵まれた人生〜

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横山光輝の漫画『史記』を読んでいます。

一度通しですでに読みましたが、内容が濃いので何度も読むに値します。

第一話は、史記の原本の著者である司馬遷(しばせん)の一生について。

彼の父は司馬談(しばたん)といい、当時一流の学者だったそうです。一流でも学問で飯は食えなかったのか、生計は農業で立てていました。

彼の息子であった司馬遷はのちに役人として朝廷に仕えますが、とあることで武帝の逆鱗に触れ、死刑を言い渡されます。

が、死刑を免れる方法が二つあって、それが、大金を納めるか、宮刑(きゅうけい)を受ける、というもの。宮刑というのは、男の性器を切り取って宦官(かんがん)となることです(去勢された男の役人のことを宦官という)。

司馬遷は宮刑を選び、死刑を免れます。

彼がなぜゼッタイ確実にチョー痛いであろう宮刑を選んでまで生きる道を選んだかというと、父のある遺言があったからですね。

いわゆるこの史記をお前の手で完成させてくれ、と。

そういう意味で、史記は司馬遷の男根と引き換えに誕生した書物と言えます。 

この第一話で描かれた司馬遷の人生について知って思ったのが、彼はある意味すごく恵まれているな、ということです。

なぜかというと、司馬遷は、父のサポートの下で存分に教育を受け、さらには史記の完成という使命まで与えてもらったからですね。

司馬遷は小さい頃から、父の勧めも大きくあり、学問一筋でした。そして二十歳の時には父から、

おまえが身につけた学問は文字だけの学問じゃ。それだけでは地方の風習や気質などその土地の匂いというものが伝わってこぬ。

(横山光輝『史記1』のP11より)

と言われ、二年間の旅をさせられます。中国大陸の名山である廬山(ろざん)に登ったり、孔子廟を訪れたり、各地の人々の話を聞いたり・・・

こうして彼は頭と身体を使って学問を身に付け、のちには史記の完成を父から託されます。

確かに宮刑は災難でしたが、司馬遷の人生は何と恵まれていることか。

もし父から教育と使命を与えられていなければ、生きる目的がはっきりせず、ただ空虚さを感じながら役人生活を送っていたかもしれません。

まあ今の時代に父から大仕事を託されるなんてはなはだ迷惑かもしれないですけどね。でもそれがなかったらなかったで人生に迷い、鬱っぽくなるかもしれないし、難しいところです。

以上、漫画『史記』の第一話を読んで思ったことを書いてみました。(一部脚色などもあるので必ずしもすべてが史実ではありません)