トランプ大統領の国境の壁と秦の始皇帝の万里の長城〜デキる改革者の落とし穴〜

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米国とメキシコとの国境に建設する壁の予算をめぐって、トランプ大統領と野党・民主党との対立が続いているようです。

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別に壁はいいと思うんですよね。

だいたい物理的な壁がなくたって、法の壁の存在は認められているわけですし、正当な理由なく入ってはいけない、という点では物理的な壁があろうとなからろうと違いがない。法を破って入ってくる人がいるなら、物理的な壁を作ろうじゃないか、というのは別に悪い発想ではない。

日本は海というある種の国境の壁が存在していますが、米国はメキシコと陸続きなので不法入国には悩まされるんだろうと思います。確かに、自分の住んでいるアパートに壁がなくて、時々となりのおっさんが正当な理由もなく入ってきて床で寝てるとか、そういう状況ってやっぱりストレス溜まると思うんですよ。

問題は、兆単位の予算を使ってまで壁を建設する価値があるのか、ということだと思います。

それはちょっとわかりかねますけど、トランプ大統領の国境の壁で思い出すのが、秦の始皇帝が北方の異民族の侵入を防ぐために建造した(実際にはそれ以前からあったものを増改築した)万里の長城です。現存のものは2000kmを超える長さで、トランプ氏が求めているのは米国とメキシコの国境の長さの約半分1600kmなので、だいぶ差があるといえばそうですが、スケールがデカいという点では共通しています。

万里の長城からわかるのは、ここまでスケールのデカい建造物となると、将来意外な価値が生じる可能性があるということです。当初は異民族の侵入防止というのが価値の中心でしたけど、現在では観光地化し、壁は立派な観光資源に変貌しています。 

そのことを考えると、トランプ大統領の建設した壁だって将来、継続的な観光収入を生み出してくれるかもしれません。

実は日本人だって壁(あるいはそれに類するもの)が好きです。平安時代の貴族の女性は父や夫など近親の男以外と話をする場合はすだれやうちわで顔を隠していました。逆に男は、普通、結婚なしに女の顔を見ることができませんでした。が、結婚が決まれば壁はなくなります。貴族の世界はそういう意味で壁だらけでした。

一方、国境の壁にしても、壁があってもコミュニケーションはできます。入国手続きだって一種のコミュニケーション。壁という名の現代の御簾(みす)ごしにコミュニケーションをして、OKならその人にとって壁はなくなります。 

話を中国大陸に戻すと、秦の始皇帝とトランプ大統領は、デキる男かつわかりやすい政策といった点でけっこう似ています。秦の始皇帝の焚書坑儒(ふんしょこうじゅ)なんてやっていることは小学生でもすぐに理解できます。要するに本を燃やして、儒者すなわち当時の知識人を生き埋めにした、と。現代のノリに移し替えると、ニ◯ーヨークタ◯ムズ燃やして、自分を批判するジャーナリストや学者を生き埋めにする、といった感じでしょうか。始皇帝は他にも、いくつかデカいことをやっています。

でも、そんなデキる男始皇帝の秦王朝はたった10年ちょいで滅びます。急激な改革や人民に対する重すぎる負担が滅亡の大きな要因になったようです。

ひるがえってトランプ大統領。

さて、実行力や大胆さ、スピードは始皇帝に通じるものがありますが、それがかえって人々の不満や恨みを招き、政治的に短命となってしまうのでは、なんてことも同時に思っちゃいますよね。

はてさて、どうなることやら。