『源氏物語』読書マラソン3〜「可哀想に」と火に油を注ぐミカド〜

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『源氏物語』読書マラソン3。

大塚ひかり訳『源氏物語』のP21〜22まで読み進めました。前回の続きとして紹介記事を書いていきます。

ではどうぞ。

 

今回はミカドに愛されるかの更衣の宮中でのお部屋が、桐壺(きりつぼ)であることが冒頭で述べられます。

そのため彼女は桐壺更衣(きりつぼこうい)と呼ばれます。

そして、他の妃(きさき)による桐壺更衣に対する陰湿なイジメの実態が描かれます。

ミカドのところへ足繁く通おうものなら、渡り廊下などに「“あやしきわざ”・・・とんでもなく異常なこと・・・」をされたり(解説によれば、「汚物が撒かれること」)、妃らの共謀により戸口を封鎖され通路に閉じ込められたりと、ひねりのない低レベルなイジメが彼女を襲います。

厚かましい性格の人なら、いくら廊下に汚物を撒かれようと、「我慢できなかったのかもしれないわ。下痢止めは持っておくものね」と、さらっと流せるものです。

が、桐壺更衣は、「か弱い」性格。自然、自分のために用意された汚物と受け取ってしまいます。

ミカドの桐壺更衣に対する愛の深さに比例するように、他の妃たちの嫉妬や恨みは増加していきます。

そのことを恋に溺れたミカドは理解できないのか、「可哀想に」と、イジメで苦しむ桐壺更衣に、彼の住む清涼殿(せいりょうでん)に近い後涼殿(こうりょうでん)のお部屋を別に与えます。

もともと後涼殿に仕えていた別の更衣を追い出すことによって。

「可哀想に」と火に油を注ぐミカドの後ろ姿は、『源氏物語』にホラーの影を落とします。

本来なら、ミカドとして、汚物の撒かれる廊下に「いつもきれいに使っていただきありがとうございます byミカド」みたいな立て札をたてるくらいの決断はしてほしいところ。

が、深い恋は、人から思考力を奪っていくのかもしれません。

 

読み進めているのは、古典エッセイストの大塚ひかりさんが訳された『源氏物語』です。いくつもある源氏物語の日本語訳の中でも特に現代的な訳で、かなり読みやすいのでおすすめ。