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中国語が喋れるとモテるのか?

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 「你好你好,认识你很高兴。我叫山田誠治」

流暢な中国語で取引先の中国人ビジネスマンと挨拶を交わす男性は山田誠治氏(32歳 仮名)。都内在住で大手商社に勤める。入社当時は、中国語の挨拶もできなかったが、今では通訳なしで中国人との商談をこなす。

「初めは大変だったですよ。何度も取引先の中国人に発音を直されました」そう言って笑い、白い歯を覗かせる山田氏。「でも頑張って勉強してよかったです」

彼がそう考えるのは、中国語で仕事をこなせるようになったからではない。中国語を自在に操れるというスキルは職務上の便宜のほかに、彼に思いもよらぬ恩恵を与えたからだった。

「中国語ができるようになってから急に女の子にモテだしたんです」と、さっきよりも興奮の色を見せる山田氏。「エサに群がる子猫のように女の子が寄ってくるようになったんです」

  山田氏は、元々モテるタイプの男性ではなかった。むしろ女の子に避けられることの方が多かったという。

「まだ中国語のできない入社当時はそりゃあひどいもんでしたよ。 例えば、僕が若い女性社員と、壁とデスクの間ですれ違うとき、相手がさっと壁に張り付いて、僕と体がふれないようにするんです」

さらに山田氏は続ける。

「ほかにも例えば、僕が仕事上の話で女性従業員に話しかけると、相手は僕の話を聞いている間ずっと、鼻から息を吐いているんです。わかるかわからないかくらいの微かな感じで。でも注意深く見ているとわかるんです。吐いているのが。きっと僕の周りの空気を吸いたくなかったんでしょうね」

 それほど女性と縁のなかった山田氏も、中国語を学び始めてからすぐに女性従業員の彼に接する態度の変化を感じ始めたという。

 「吸っているんです」と山田氏は興奮気味に語る。「吸っているのがわかるんです、女性が僕の周りの空気を」

この事実に気がついた山田氏はさらに中国語の学習に励み、最終的に今のように通訳なしで中国人との商談に臨めるほどになった。そして現在では、女性にモテ過ぎて困ってしまうことも多々あるという。

「先週の日曜日も、会社の同僚の女性4人を連れて海に行ったんですが、そこでも知らない女性に声をかけられて、彼女たちの嫉妬を買っちゃいましたよ」そう言って困ったような顔をする山田氏も、どこか満足げだった。

 鄧小平の改革開放政策以来、急速な発展を続ける中国。貧乏、チャリンコ大国というかつてのイメージも時代遅れのものとなり、「中国語ができる」ということは一つのステータスになりつつある。そしてそれが、モテる者とモテざる者との格差を生み出そうとしている。

英語さえままならぬ日本の若者の多くは今、「英語か中国語か」という厳しい選択を迫られている。 

 

(この記事は、フィクションです)